漁船

煮干しの美味しさは、スピードで決まる!?

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煮干し製造の際、もっとも重要なのは、原料となるカタクチイワシ(以下、カタクチ)の鮮度です。しかし、カタクチは、同じ青魚のアジやサバなどと比較しても、驚くほど鮮度が低下するスピードが速いのです。

また、煮干しの旨味成分は、鰹節と同じイノシン酸なのですが、原料のカタクチは生きている時は旨味成分イノシン酸がほとんどありません。漁獲時に網が絞られ、カタクチが暴れることで酵素がイノシン酸に変化するのです! しかし、そのカタクチのイノシン酸は時間の経過とともに失われていくので、漁港に急いで戻ってすぐに加熱することで、イノシン酸の分解をストップするのです。

それらの理由から、カタクチは、漁業後に漁船が漁港に戻ると、迅速に加工工場へ運ばれ、サイズごとに選別された後、鮮度が落ちないうちに、高温で一気に茹で上げられます。ちなみに、長崎では、煮釜でカタクチを茹で上げることを「煮干しを炊(た)く」と言います。

高い鮮度のカタクチを最速で茹で上げるために、昔の瀬戸内海では、漁船に煮釜を持ち込んで漁獲後、そのまま釜に放り込んでいたこともあったそうです。それほど、煮干し製造には、原料となるカタクチの鮮度が最重要なのです。

その後、茹で上がったカタクチを乾燥させれば、煮干しの出来上がりです。

このように、漁業者と私たち加工業者がともに鮮度を追い求めることで、美味しい煮干しを提供できるのです。

(参考資料)「長崎県漁業協同組合連合会」ホームページ